参考資料

劇場オリジナルアニメーション「サイダーのように言葉が湧き上がる」メイキング

劇場オリジナルアニメーション「サイダーのように言葉が湧き上がる」のメイキング記事が公開されています。

https://cgworld.jp/feature/202107-ciderkotoba.html

<1>舞台となるショッピングモールを3DCGで作成し3Dレイアウトをフル活用したアニメーション制作

3DCGでショッピングモールを作成

物語の舞台となるショッピングモールのイメージボードだ。図は手描きによるイメージボードではなく、3DCGで作成された決定稿である。実際に某地方都市にあるショッピングモールを取材し作成されている。

 

MODOでモデリング

ショッピングモールのモデルは、MODOでモデリングされている。作成されている範囲としては、ショッピングモールとその周辺500mほど。基本的に3Dレイアウト用のモデルなので、正確なラインを出すためにディテールがつくり込まれているが、マテリアルはセル塗り調の単色で設定されている。

 

各テナントまでモデリングされた内装

ショッピングモールのモデルは内装も1階から3階そして屋上と、作品に登場しない部分までモデリングされており、ウォークスルーできるレベルでつくり込まれているという。このショッピングモールのほかにも、内装の背景のある部分はモデリングされているものが多く、3Dレイアウトが作成されている。

 

<2>物語の舞台設定を3DCGを使ったダイナミックなカメラワークで提示する

オープニングの美術ボード

3DCGのアニメーション作業に入る前に、美術側から提示された美術ボードだ。80年代に流行ったイラストのようなアメリカンポップ風の色調が強調されたイメージになっている。

 

ダイナミックなカメラワーク

オープニングのショットを作成するにあたり、まずはカメラワークから詰めていったという。稲のモデルやテクスチャのディテールを途中で切り替える必要があったため、監督と意見を交換しながら、何度も試行錯誤しつつカメラワークが作成されている。

 

自然な稲の描写

オープニング冒頭の俯瞰では、美術が描いた水彩風の稲のディテールを落とした田んぼの素材を、区画ごとに色味を変えて配置しており、カメラがスピードアップするところで、稲のテクスチャをマッピングした板ポリゴンをインスタンスで配置したシーンモデルに上手く切り替えている。稲のテクスチャにバリエーションをもたせることで、より自然に見せている。

 

<3>スマートフォンで撮影された360度パン映像を3DCG的な手法で効率良く制作

LightWaveでカメラワークを設定する

制作に先立ってLightWaveを使ってカメラワークが作成されている。スマイルが自撮りをしながら回転しているため、背景だけが回転しているというショットになっている。

キャラクターの作画参考に出力された3Dレイアウト。人物は全て作画に置き換えられる。中央の赤い枠は自撮りのスマイルが入る範囲。

 

カメラマップ用のガイドを出力する

カメラワークが決まったところで、図のようなカメラマップ用素材を美術が作画するためのガイドが出力される。美術はこのガイドに対して、ショップ名やガラスの反射などを貼り込んでガメラマップ用の背景素材を作成していく。

 

カメラマップ素材

出力された3Dレイアウトをベースに美術が作成したカメラマップ素材。ショップ名やガラスの反射、壁の陰影などが描き込まれている。この素材をカメラマップに使用して360度回転する背景動画が作成される。

 

カメラマップ素材を貼り込む

作成されたカメラマップの素材を貼り込むとこのようになる。このようなカメラの動きを作画で行うと非常にコストがかかる作業になるが、3DCG背景を使用することで効率良くカットを作成できるという。ただしこのカットでは作画やコンポジションの指示が非常に細かくなり、タイムシートでは理解しにくい部分もあるため、監督が仮コンポを組んで指示している。

TVPaint Animationを使ったデジタル作画の作業画面。TVPaint Animationはプレビューしながら作画することができるため、このようなタイミングを見ながら作画するには非常に優れたツールだという。

 

<4>割れたピクチャーレコード盤を3DCGを使って効率良く&効果的に表現

ピクチャーレコードを3Dモデルで作成する

LightWaveで作成されたピクチャーレコードのモデル。割れ方や模様の位置を、複数のカットで正確に合わせないといけないような場合は、作画よりも3DCGで作成した方が管理が楽だ。

 

キャラクターの手も3Dモデルで作成

このカットはレコード盤だけではなく、キャラクターの手なども3Dモデルが使用されており、ほぼ3DCGで出来上がっている。作画に比べて3DCGでは影の付け方が難しいため、影やハイライト位置の参考画像を作成し、最終的にはAfter Effectsで影の調整を行なっている。

 

監督自らレコード盤の割れ方をモデリング

イシグロ監督は自らBlenderでCG制作ができるため、レコード盤の割れ方や絵の入り方なども、実際にモデルを作成してスタッフに指示している。

 

<5>3Dレイアウトを積極的に利用して物量の多い背景美術を事故なく制作していく

3DCGでシーンの香盤を管理(フジヤマ・レコードの店内)

物語の進行に応じて状況が変化するような舞台では、その舞台の状態を記録した香盤表がとても大切になってくる。3DCGで舞台を作成しておくと、その香盤の管理が非常にしやすいという。

 

テクスチャで貼り込みミスを回避する(「陽だまり」の内装)

デイサービス「陽だまり」の壁には、利用者が作成した掛け軸や絵画がところ狭しと飾られている。このような背景では、美術による貼り込みミスや作業効率を考え、3Dレイアウトを出力する時点で、テクスチャを使って掛け軸や絵画をマッピングしている。

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