参考資料

「ソニック・ザ・ムービー」メイキング記事

映画「ソニック・ザ・ムービー」のメイキング記事が公開されています。

https://cgworld.jp/feature/202006-cgw262hs1sonic.html

総力を結集してハリウッド映画の要件をクリア

日本のCGプロダクションがハリウッド映画の制作を受託するのは極めて異例なことで映像のクオリティだけでなくセキュリティ面や制作進行のちがいなど、いくつものハードルを越えなければならなった。

マーザが担当したのはオープニングのフルCGパートを含む約70カットだが、実際にはその3倍近いショットを制作したという。

 

ソニックらしさを追求する~キャラクターアセット

パラマウント映画が本作のヘッドスタジオを設けてプリプロを実施。マーザには、同スタジオから実制作に必要なアートやリファレンス、仕様書が提供された。
ハリウッド映画のCG・VFX制作では、スタジオごとに独自のパイプラインを構築し、様々なインハウスツールを用いているため、提供された多くのアセットはそのまま使用することはできず、データを解析しイチから再構築する必要があったという。

Furをジオメトリ化したデータのためメモリ負荷が高く、Mayaでは開くことができませんでした。そこでHoudiniでリダクションを行なった後、Mayaに持ち込みYetiでFurを再構築することにしました。

海外スタジオはRenderManを使用していたが、マーザが本作で使用したレンダラはArnold。MPCから提供されたテクスチャ素材を実際のレンダリングでマッチするために組んだスキンのシェーディングネットワーク図。

 

リグについてもヘッドスタジオからの提供データを基にmGearを用いて再構築。

 

フェイシャルはシェイプターゲットを参考に、より柔軟性の高いコントロールが行えるカスタムリグが開発された。眉やほうれい線などをカーブで指定することでリグが自動生成されるしくみで、要求された表情はリグで再現できるようになっている。

フェイシャルアニメーションはFACS理論で構成されているが、リアルな表情を再現することが目的ではなくリアルな表情を基にキャラクターらしい表情を加えることでソニックらしさを表現。

 

ハリウッド作品の制作を受託するには、ハリウッド映画産業が推奨するセキュリティ監査団体CDSA(Content Delivery & Security Association)とアメリカ映画協会(MPAA)が2018年に合併事業として起ち上げたセキュリティ監査プログラム「TPN(Trusted Partner Network)」の要件に準拠した制作環境とシステムを構築し、事前に審査を受ける必要もあった。

本プロジェクトに用いられたTPN準拠のネットワーク構成図。マーザが入居するビルの別フロアに物理的にも独立したスタジオが設けられた。

 

デザインや演出面でも積極的にアイデアを提案

ヘッドスタジオから提供された世界観等のアートはゲームのイメージを踏襲したデザインとなっており、そのまま作成してしまうとリアリティが損なわれしまうため、まずは提供されたアートをベースに改めてコンセプトアートを描いた。

制作途中のやり取りにおける、ディレクターからの手袋に対するフィードバック例

 

頭部のYetiネットワークグラフ。海外スタジオから提供されたベビーソニックのモデルはレンダリングにメモリを約30GB消費する状態だったため、ファーFurをオプティマイズしアトリビュートやノード、レイヤー数などを見直すことから作業を開始。最終的には約10GBまで最適化することに成功した。

 

ロングクローのデザインはアニメーションを想定してデザインされていなかったため、クロスシミュレーションを併用することでめり込みを回避。

 

背景セットのドレッシングはレイアウト班が担当した。提供されたストーリーリールを基にリアリティのあるサイズ感や距離感を割り出しレイアウトモデルを作成。

 

リールを観て原作ゲームの世界観を採り入れたいのだと感じたので、ゲームムービーを見直して疾走感やジャンプした際の浮遊感などソニックらしい要素を盛り込んだプリビズを作成し、監督に逆提案したところ快諾してもらいました。

 

エキドナが大量に登場するシーンでは前後関係も複雑で、通常の素材分けではエレメントが膨大になってしまうためディープ・コンポジットを導入。

DeepRecolorで画像とDeepを合わせ、DeepMergeでそれぞれを合成。DeepHoldoutノードでHoldoutを出力している。

一般論的にDeepファイルは大容量と言われていますが、今回はDeepレンダリング時にTolerance Valuesのalpha、depthのパラメータを調整することで常識外れな容量にならないことを確認した上で利用しました。

今回は、あらゆる工程が同時並行で進行したため、完成に近い状態になってもカメラワークが変更になることもありました。最後まで妥協しない姿勢によって、ハリウッドクオリティが創り出されているのだと実感しました。クライアント側のVFXスーパーバイザーは、わずかな色のちがいや動画では気づかないような些細な点も鋭く指摘し、その鑑識眼にも驚かされました。

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